小金沢ゼミ展2023「井戸と窓」
アーカイブ:2023年10月6日公開
出品学生:春日井花梨、鈴木千賀、田中里奈、眞島まどか、百井さくら(東北芸術工科大学芸術学部美術科日本画コース4年)
会期:2023 年8 月23 日(水)~ 9 月3 日(日)
会場:THE LOCAL TUAD ART GALLERY
会期:2023 年8 月23 日(水)~ 9 月3 日(日)
会場:THE LOCAL TUAD ART GALLERY
コンセプト
「井戸」へ潜る、「窓」からまなざす
小金沢智(東北芸術工科大学芸術学部美術科日本画コース専任講師)
東北芸術工科大学の小金沢ゼミ(芸術学部美術科日本画コース)では、「井戸」と「窓」をメタファーとして、自身の内側と外側に対する意識を手がかりに制作した絵画を展観する展覧会「井戸と窓」を開催いたします。
例えば、村上春樹の小説『ねじまき鳥クロニクル』(1994 年)で主人公の岡田トオルが潜り込んだ、外界から閉ざされ、個人の意識・無意識へと深く潜る場所としての「井戸」。あるいは、赤瀬川原平が絵本『四角形の歴史』(2006 年)で、(人間は、そこから)「はじめて風景を見たのではないだろうか」と書いた、自身以外の世界へとひろく視線を向けさせるものとしての「窓」。「井戸」と「窓」は、それぞれ固有の機能を持ちながら、それだけにとどまらないイメージを静かに目覚めさせるモチーフです。
今回の展覧会では、今年度卒業予定のゼミ生5 名の作品を、担当教員の私が見つめたとき、「風景」や「記憶」に対する視点・関心が共通して認められるのではないかという思いと、学生からの、「展覧会をするなら、本画だけではなく、下絵やスケッチも展示したい」(「本画」とは、日本画における完成作品を指します)という提案があり、そこから「井戸と窓」という、シンプルですがどこか謎めいているテーマへとたどり着きました。
「何かをつくる」ということは、自身の内側と外側を、世界の表と裏を、作品の完成と未完成を、すなわち、あちらとこちらを行ったり来たりすることのように思います。作品にあらわれるのは、かけがえのない、作者のその不断の営為にほかなりません。
本展では、同時に卒業制作にも取り組みながら、自身にとっての「井戸と窓」を見つめる5 名の思索をご覧いただきます。
小金沢智(東北芸術工科大学芸術学部美術科日本画コース専任講師)
東北芸術工科大学の小金沢ゼミ(芸術学部美術科日本画コース)では、「井戸」と「窓」をメタファーとして、自身の内側と外側に対する意識を手がかりに制作した絵画を展観する展覧会「井戸と窓」を開催いたします。
例えば、村上春樹の小説『ねじまき鳥クロニクル』(1994 年)で主人公の岡田トオルが潜り込んだ、外界から閉ざされ、個人の意識・無意識へと深く潜る場所としての「井戸」。あるいは、赤瀬川原平が絵本『四角形の歴史』(2006 年)で、(人間は、そこから)「はじめて風景を見たのではないだろうか」と書いた、自身以外の世界へとひろく視線を向けさせるものとしての「窓」。「井戸」と「窓」は、それぞれ固有の機能を持ちながら、それだけにとどまらないイメージを静かに目覚めさせるモチーフです。
今回の展覧会では、今年度卒業予定のゼミ生5 名の作品を、担当教員の私が見つめたとき、「風景」や「記憶」に対する視点・関心が共通して認められるのではないかという思いと、学生からの、「展覧会をするなら、本画だけではなく、下絵やスケッチも展示したい」(「本画」とは、日本画における完成作品を指します)という提案があり、そこから「井戸と窓」という、シンプルですがどこか謎めいているテーマへとたどり着きました。
「何かをつくる」ということは、自身の内側と外側を、世界の表と裏を、作品の完成と未完成を、すなわち、あちらとこちらを行ったり来たりすることのように思います。作品にあらわれるのは、かけがえのない、作者のその不断の営為にほかなりません。
本展では、同時に卒業制作にも取り組みながら、自身にとっての「井戸と窓」を見つめる5 名の思索をご覧いただきます。
概要
展覧会名:小金沢ゼミ展2023「井戸と窓」
出品学生:春日井花梨、鈴木千賀、田中里奈、眞島まどか、百井さくら(東北芸術工科大学芸術学部美術科日本画コース4年)
担当教員:小金沢智(東北芸術工科大学日本画コース専任講師)
会期:2023 年8 月23 日(水)~ 9 月3 日(日)
開場時間:10時~19時[最終日は17 時まで]
休廊日:無休
入場料:無料
会場:THE LOCAL TUAD ART GALLERY
お問い合わせ:東北芸術工科大学 日本画準備室 023-627-2135
出品学生:春日井花梨、鈴木千賀、田中里奈、眞島まどか、百井さくら(東北芸術工科大学芸術学部美術科日本画コース4年)
担当教員:小金沢智(東北芸術工科大学日本画コース専任講師)
会期:2023 年8 月23 日(水)~ 9 月3 日(日)
開場時間:10時~19時[最終日は17 時まで]
休廊日:無休
入場料:無料
会場:THE LOCAL TUAD ART GALLERY
お問い合わせ:東北芸術工科大学 日本画準備室 023-627-2135
アクセス
THE LOCAL TUAD ART GALLERY
〒990-0043 山形県山形市本町 1-5-19 やまがたクリエイティブシティセンター Q1 1 階 1-G
yamagata-q1.com/
・JR 山形駅から徒歩15 分
・山形市中央駐車場から徒歩10 分
・ベニちゃんバス「本町」停留所から徒歩3 分
Q1の斜め向かいに、無料駐車場有(利用時間:9 時~22 時、収容台数:22 台)
ただし、収容台数に限りがあるため、満車の場合は山形市中央駐車場をお使いください(割引有り。詳細はQ1 ホームページ参照)。Q1 に隣接する市立第一小学校の駐車場は利用できません。
〒990-0043 山形県山形市本町 1-5-19 やまがたクリエイティブシティセンター Q1 1 階 1-G
yamagata-q1.com/
・JR 山形駅から徒歩15 分
・山形市中央駐車場から徒歩10 分
・ベニちゃんバス「本町」停留所から徒歩3 分
Q1の斜め向かいに、無料駐車場有(利用時間:9 時~22 時、収容台数:22 台)
ただし、収容台数に限りがあるため、満車の場合は山形市中央駐車場をお使いください(割引有り。詳細はQ1 ホームページ参照)。Q1 に隣接する市立第一小学校の駐車場は利用できません。
フライヤー制作
デザイン:百井さくら
イラストレーション:田中里奈
タイトル:春日井花梨
キャプション(数字・アルファベット):春日井花梨、鈴木千賀、田中里奈、眞島まどか、百井さくら
ディレクション:小金沢智
イラストレーション:田中里奈
タイトル:春日井花梨
キャプション(数字・アルファベット):春日井花梨、鈴木千賀、田中里奈、眞島まどか、百井さくら
ディレクション:小金沢智
アーカイブ:テキスト(執筆:小金沢智)
・「井戸」へ潜る、「窓」からまなざす(ごあいさつに代えて)
・「今日の」「ぼくら」の「世界」を見つめる(解説に代えて)
・「今日の」「ぼくら」の「世界」を見つめる(解説に代えて)
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「今日の」「ぼくら」の「世界」を見つめる(解説に代えて)
東北芸術工科大学の小金沢ゼミ(芸術学部美術科日本画コース)では、学内の課題・成績と関わらない、ゼミの自主活動として読書会と展覧会を実施することを掲げ、2022年11月、3期目のゼミをスタートしました。展覧会は、まさに今・ここで行われているこの展覧会「井戸と窓」。
では、読書会はと言うと、2022年冬から2023年春にかけて、2冊の本̶̶ 岡本太郎『今日の芸術』(光文社知恵の森文庫、1999年[初版:1954年])、高橋源一郎『ぼくらの戦争なんだぜ』(朝日新書、2022年)を読みました。
全員、あらかじめ読んでくることを前提として、章ごとの担当者を決め、担当者がレジュメを作り、発表。その後、全員で意見交換を行う。
岡本太郎『今日の芸術』と高橋源一郎『ぼくらの戦争なんだぜ』は、前者は戦後の時代の芸術論、後者は文学から読み解く戦争論。
刊行時期は、半世紀以上の時代を隔てていますが、どちらにも共通しているのは、「個人」に価値を置いている点です。
『今日の芸術』では、岡本太郎は「絵はすべての人の創るもの」であり、それが「あなた自身を創造する」のだと言い、『ぼくらの戦争なんだぜ』では、高橋源一郎は「ぼくら」を構成する個人としての「ぼく」という主体を重視し、「戦争」を遠い/世界の外側の存在としての「彼らの戦争」ではなく、近い/世界の内側の存在としての「ぼくらの戦争」として考えることの必要性を説きました。
独立した個人としての「ぼく」であり「わたし」。「世界」について、今を生きる個人として主体的に考えること。
本展のテーマである「井戸」そして「窓」は、言わば、どうにでも解釈することのできる、「おおきな器」のようなものだと思っています。
そこには、どんなものも放り投げることができる。「井戸」とは何で、「窓」とは何か。
学生たちは、その問いに対して自分なりの答えを見つけようとするしかありません。
この会場̶̶決してサイズの大きくないTHE LOCAL TUAD ART GALLERYでは、前半を「井戸」、後半を「窓」のための空間と定め、「井戸」から「窓」へと向かう(行き来する)展示構成としています。「井戸」では、新作・旧作を問わず、「作者が、そう解釈することのできるもの」を。
そこには、下絵やドローイングなどの、「作品以前」と見なされがちなものも含まれるかもしれません。「窓」では、全員同じフォーマットを決め、縦910×横652mm(P30号)の新作が並びます。同じフォーマットだからこそ、「窓」に対する解釈の違いも、いっそうあらわれることでしょう。
大切なことは、「今日の」という現在性をともなって、「ぼく」「わたし」という主体から制作されたものであることです。
そこから見つめられる世界が、どのようなものであるのか。
展示設営を目前とした今の私には、全貌は計り知れませんが、それらの作品が、しっかり「ぼく」「わたし」以外の/広い世界を見つめながらも、個人としての思いを十分に込めたものであって欲しいと思います。片側に留まらず、そのあいだを行き来することが重要ではないかと、私が考えるからです。
そして、願わくば、ご来場くださった方々が、それらの作品を通して、「今日の」「ぼくら」の「世界」を、個人として見つめる機会となりますように。
2023(令和5)年8月14日
小金沢智(東北芸術工科大学芸術学部美術科日本画コース専任講師)
東北芸術工科大学の小金沢ゼミ(芸術学部美術科日本画コース)では、学内の課題・成績と関わらない、ゼミの自主活動として読書会と展覧会を実施することを掲げ、2022年11月、3期目のゼミをスタートしました。展覧会は、まさに今・ここで行われているこの展覧会「井戸と窓」。
では、読書会はと言うと、2022年冬から2023年春にかけて、2冊の本̶̶ 岡本太郎『今日の芸術』(光文社知恵の森文庫、1999年[初版:1954年])、高橋源一郎『ぼくらの戦争なんだぜ』(朝日新書、2022年)を読みました。
全員、あらかじめ読んでくることを前提として、章ごとの担当者を決め、担当者がレジュメを作り、発表。その後、全員で意見交換を行う。
岡本太郎『今日の芸術』と高橋源一郎『ぼくらの戦争なんだぜ』は、前者は戦後の時代の芸術論、後者は文学から読み解く戦争論。
刊行時期は、半世紀以上の時代を隔てていますが、どちらにも共通しているのは、「個人」に価値を置いている点です。
『今日の芸術』では、岡本太郎は「絵はすべての人の創るもの」であり、それが「あなた自身を創造する」のだと言い、『ぼくらの戦争なんだぜ』では、高橋源一郎は「ぼくら」を構成する個人としての「ぼく」という主体を重視し、「戦争」を遠い/世界の外側の存在としての「彼らの戦争」ではなく、近い/世界の内側の存在としての「ぼくらの戦争」として考えることの必要性を説きました。
独立した個人としての「ぼく」であり「わたし」。「世界」について、今を生きる個人として主体的に考えること。
本展のテーマである「井戸」そして「窓」は、言わば、どうにでも解釈することのできる、「おおきな器」のようなものだと思っています。
そこには、どんなものも放り投げることができる。「井戸」とは何で、「窓」とは何か。
学生たちは、その問いに対して自分なりの答えを見つけようとするしかありません。
この会場̶̶決してサイズの大きくないTHE LOCAL TUAD ART GALLERYでは、前半を「井戸」、後半を「窓」のための空間と定め、「井戸」から「窓」へと向かう(行き来する)展示構成としています。「井戸」では、新作・旧作を問わず、「作者が、そう解釈することのできるもの」を。
そこには、下絵やドローイングなどの、「作品以前」と見なされがちなものも含まれるかもしれません。「窓」では、全員同じフォーマットを決め、縦910×横652mm(P30号)の新作が並びます。同じフォーマットだからこそ、「窓」に対する解釈の違いも、いっそうあらわれることでしょう。
大切なことは、「今日の」という現在性をともなって、「ぼく」「わたし」という主体から制作されたものであることです。
そこから見つめられる世界が、どのようなものであるのか。
展示設営を目前とした今の私には、全貌は計り知れませんが、それらの作品が、しっかり「ぼく」「わたし」以外の/広い世界を見つめながらも、個人としての思いを十分に込めたものであって欲しいと思います。片側に留まらず、そのあいだを行き来することが重要ではないかと、私が考えるからです。
そして、願わくば、ご来場くださった方々が、それらの作品を通して、「今日の」「ぼくら」の「世界」を、個人として見つめる機会となりますように。
2023(令和5)年8月14日
小金沢智(東北芸術工科大学芸術学部美術科日本画コース専任講師)
アーカイブ:会場風景(撮影:三浦晴子)