10月11日から14日までフランス北部のリールに行っていました。現地で開催されている「ルネッサンス2015」というアートイベントにフラワーアーティストの東信さんが新作を展示するということで、作品を拝見するため、設置の最終調整からオープニングレセプションまで同行させていただきました。
はじめて訪れたリールは、19世紀には繊維工業で隆盛したものの第二次世界大戦後恐慌によって衰退、しかし今は欧州文化首都に選ばれ(2004年)、歴史文化都市の称号も与えられるなど、現在は文化芸術事業に大きな力を入れているとのこと。「ルネッサンス2015」は、欧州文化首都に選ばれたことをきっかけにして結成された「リール3000」というプロジェクトによるもので、美術館・博物館などのいわゆるアートスペースだけではなく、街の通りや広場などにも作品を設置する、いわば街全体を会場にしたアートイベント/フェスティヴァルです。それ自体は日本でも決して目新しいものではありませんが、元郵便局だというトリポスタルという会場では(大きい!&地下スペースがかっこいい)、韓国の現代美術を紹介する展覧会を行っていたり(日本でもあるといいなと思う、政治的なことにも強く言及した展示でした)、フランスで2番目に大きいというリール宮殿美術館では、「生」というテーマからセレクションした近代から現代までの作品による「生きる歓び」展を開催していたり(ここで見た新古典主義時代のピカソはたまらなかったし、最後に村上隆さんの作品が出ていてグッときました)、アートワークやプロジェクトの全部は見切れなかったものの、美術をめぐる状況や環境など印象に残ることが多く、刺激を受けた3泊4日でした。海外行くこと自体、私は生涯2回目&5年ぶりなので、なおさらです。
ルネッサンス2015 公式サイト
http://www.lille3000.eu/portail/evenements/renaissance-2015
ルネッサンス2015 インスタグラム
https://www.instagram.com/explore/tags/RLILLE3000/
東さんの作品については、これから文章を書くため、なにかの形でまとまったときに改めてお知らせしたいと思いますが、2016年1月17日までと長い会期のため、お近くの方はぜひと思います。《FLOWER PILLAR》という真空パックした花およそ4,000点を用いたインスタレーションと、アマリリスの球根をコンクリートの柱に植えこんだ《Concrete×Bulb》20点、そして《LEAF MAN》の写真が展示されています。写真作品以外はいずれも、生きた植物を用いた東さんの作品らしく、「時間」が大きな要素になっているので、いつ行っても、新しい発見があると思います。作品が最後どうなるのか、その状況を見れないのが残念です。
パリ同時多発テロが起きたのは、オープニングレセプションが行われた13日の夜のことでした。リールはシャルル・ド・ゴール空港からTGVで約1時間、そして私自身ニュースなど常に見ることができるような環境になかったため、すぐ情報を得られず、レセプション後に流れていったバーで、しばらくして、ようやく状況を知りました。私自身フランスは短い滞在だったものの、渡仏を伝えていたいろいろな方に心配をおかけし、沢山連絡いただきましたが、帰国の14日夕方、シャルル・ド・ゴール空港から飛行機自体は特に問題なく飛び、無事帰国しています。お亡くなりになった方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
土地について考えることが多くなっています。とりわけ、その土地の中で培われた、根付いた、歴史について、文化芸術について、信仰について、あるいは常識というものについて。これは、10月に私が約4年間住んだ神奈川県川崎市から埼玉県久喜市に引っ越し、さらに群馬県のある市で新たに仕事をはじめているからということも多少なり関係しているのですが、そうやって、たとえ国内であっても、住む/働く土地が変われば、ささやかでもなにかが変わる/変わらざるをえないもので、それが国境を違えるならば、いっそうそれはいちじるしい。リール宮殿美術館で見たキリスト教美術の数々は、まさしくそういうものとして私には迫ってくるものでした。そのなかで、自分は自分という存在をどう立たせることができるのか/どう生きていくことができるのか。わからない、知らない、しかし尊重すべきあなたを前に、なにができるのか。私はそのために、見ることと、見たものをさらに知ろうとすることを続けたいと思いました。
そんなことを考えながら、また季節がうつっていきます。鍋したい。
写真は、東信展会場(Le colysee in Lambersart, Lille metropole, France)を手前の川から臨んで。建物中央の「光る柱」が《FLOWER PILLAR》、1階から2階までを突き抜けるように、作品が展示されています。